名グローブ!!

いいよ!こいよ!鼻にかけて鼻に!(天狗)

映画「若おかみは小学生!」考察のような感想(ネタバレあり)

劇場版「若おかみは小学生!」について、いろいろと思ったこと・考えたことをネタバレ全開で書いていくのでまだ見ていない人はこんなん読まずに劇場に行ってください。とりあえず見ないと始まりません。

  • 絵作りによる後味のよさ

絵作りがすごいというのは聞いていたけど、いざ見ているとあれがすげえこれがすげえとはならず、というか細かいところを気にしている場合ではなくストーリーとおっこの行く末を見ているだけでいっぱいいっぱいになるわけです。

でも後味としては、また見たいな、あの絵を、あの世界をまた味わいに行きたいな、という思いが他の映画を見た時より強い気がするんですよね。たぶんそういう後を引く心地よさというのは、包丁への映り込みとか水晶への映り込みみたいな映像へのこだわりと果てしない作り込みが生み出しているように思うのです。

  •  グローリーさんの話

グローリーさんの宿泊理由を「傷心旅行」で片付けてしまうのは軽すぎる気がしていて、自分が信頼している、信頼しなくてはならない職能であるところの「占い」が、外れたにせよ当たっているにせよ思惑から大きくズレた結果(彼氏に振られる)に至っているわけで、そのショックは仕事もプライベートも揺るがすものだったと思うんすよね。

そこを少なからず癒してあげられたのはおっこな訳ですよ。お客さんであるグローリーさんに元気を出してもらおう、喜んでもらおうと一生懸命におもてなしするおっこちゃんに動かされないはずがない。こうして書いてても思い出してちょっと、うっ…てこみ上げてきてしまうくらいの献身さ。

終盤におっこが、受け止めきれない色々なものに押しつぶされそうになった時、グローリーさんが車に乗って颯爽とやってきたときはもう、「うわあああああ!」「グローリーさん・・・どうかおっこを、おっこを支えてあげてつかあさい・・・」と思わずにはいられない。

巷で見かけた感想で、「運気が最高の時に彼氏に振られたってのはつまり、振られることでおっこに出会うのが最良だからってことなんだよ!」ってやつ、かなりええやんって思いました。

あと、グローリーとおっこの2ランク上のモールデート良かったわあ。その前のトラウマ描写からの流れもあって、とても明るく楽しいシーンだった。

  •  ウリ坊はどうやっておっこを助けたか

ウリ坊は人界のものにはほぼ干渉できない、みよちゃんは余裕で物理干渉できる、鈴鬼に関しては物理干渉できて食事も可能という、それぞれ人ではない者達だけど力の強さは違っている。

こうしてみると物理干渉ができないウリ坊がおっこを交通事故から救えたのは奇跡に近いことだったのではないかと思う。生前のおっこママによる願いの力が奇跡を起こしたのかもしれない。と見終えた直後は思ってたけど、エンディングのストーリーボード的なやつでおっこママが念じてたのは鈴鬼の鈴に対してであって、ウリ坊はそれをたまたま見かけて、というか聞いていただけっぽいんよな。ウリ坊がおっこを救えたのは何でだろうという疑問が残る。

ただ、 映画を見た後にいまテレビ版を追って見ているわけですが、ここではウリ坊がおっこの手に憑依して動かしたりしてるわけです。もしかすると事故の時はおっこに憑依して無理やり動いて脱出した可能性もある。にしても別の車の天井にドーンと乗っかるような動きができるのかという疑問は残るわけですが。

原作とかだとそこらへんの説明のようなものもあるかもしれんですが、映画からだとウリ坊の力がどんな感じで、どうやっておっこを救ったかは分からん感じですな。

  • ウリ坊とみよちゃんが消える理由

ウリ坊とみよちゃんが消えてしまったのは、恐らく未練が果たされたからだと思っている。ウリ坊の懸念であった「春の屋、ばあちゃんの後継問題」、みよちゃんの懸念であった「妹(ピンフリちゃん)のこれから」。これらが十分に解決され、それぞれが満たされるタイミングとして、祭事がドンピシャだったということなんじゃなかろうか。

祭事で主役を張れるほどになったおっこと、おっこというライバルであり同じ道をゆく者であり言い合いができるような友達を得たピンフリちゃん。これによって幽霊二人の未練はほぼ断ち切られたがゆえに、そのタイミングで消えることになったのではないか。

  • 思った以上にハードな描写とストーリー

あんまり前評判としては見かけなかったけど、おっこのトラウマ描写がガチ寄りだったので、感化されやすいタイプの人は多少心構えを持っていた方が良いかもなーと思った。シーンとしては少なくて、高速道路のところと山寺の告白のとこくらいなんだけど、おっこの精神的なダメージの根深さがあの過呼吸で極めて強く伝わってくる。自分自身、ああいう描写に引っ張られて一緒にいっぱいいっぱいになることがあるので、「あ、このシーンは感化されそう」ってところは深呼吸して落ち着くようにしてる。

この世界の片隅に』の真っ暗な空間的なシーンとかも映画館みたいな暗い閉鎖空間で見ると真に迫る感じだったので、ああいうのに影響を受けやすい人はこの映画でも思わぬ方向からボディブロー食らうかもしれない。

そのくらい演出や演技がすごいということでもある。おっこが過呼吸になってグローリーさんの声が遠くなるとことかすげえなあって思った。

両親が死んでしまっている実感がなくって、夢の中で両親に会って幸せそうにしてるとこみたいな描写が上手くて、「意識的か無意識か分からないけど死を実感できていない(していない)おっこ」を見てる側が追体験している感じになる。だから、お客様として接し、元気になってもらおうとおもてなししていた人たちが一転して「両親の死を認識せざるを得ない死の立証者」に突如として転化してしまうあの終盤の流れが突き刺さってくる。(そんなんありかよ・・・)と思っちまうよな。

そんな感じでなかなかにハードだった。今テレビ版観てるけど映画と違ってノリが軽いので癒される。えっ若おかみ?ええやん!みたいなノリ。楽しいからみんな見てほしい。アマプラで見れるから。

  • 鈴鬼はどこまで見えてるか

2人が消える日が決まった、という鈴鬼の言い方は、鈴鬼自身がウリ坊とみよちゃんの消える日を決めているのか、それとも鈴鬼の推測を話しているのかよく分からなかった。 鬼の能力としてある程度未来が読めるのかもしれない。客を引き寄せるというなかなかの上位能力持ちであることからも、何か読めるのかもなあとか思った。

  • パンフレットは先に買う

パンフレットを映画観る前に買っといたんだけど正解だった。泣き所が映画の終盤に寄ってるし、余韻に浸れるはずのエンディングもじわじわ涙腺をつねってくるのでなんか情けない状態でシアターから出る羽目になる。その状態でパンフを買うのは多分かなり辛いのではないか。「若おかみは小学生!のパンフレットください」って言うこと自体も勇気がいるのに。先に買った方がたぶんいい。

見てる最中は「トラウマ描写からの落差で耳キーンなるわ!」とか「なんだこの曲!?」とか「ファッションショーたまらん!」とか関係ないとこで忙しくなっててあんま覚えてないはずなんだけど、なんかまた聞きたくなってくるジンカンバンジージャンプとかいう曲。サントラとかなんやらで出してください、オナシャス!

  • まとめ

また見てえなあ。BDを早くお願いいたします。

みんなも見るといいよ。面白いから。